ベッドからの立ち上がり介助のポイントとは?

年齢を重ねて体力が衰えてくると、若い頃に当たり前にできていたこともできにくくなるものです。立ったり座ったりする動作もそのひとつ。ここでは、高齢者を在宅介護する方に役立つ、立ち上がりや座る動作の介助方法をご紹介します。

年齢を重ねて体力が衰えてくると、若い頃に当たり前にできていたこともできにくくなるものです。立ったり座ったりする動作もそのひとつ。家族に高齢者がいる場合、日常生活の中の簡単な動作であっても介助が必要なことも出てくるかもしれません。ここでは、高齢者を在宅介護する方に役立つ、立ち上がり動作の介助方法をご紹介します。

高齢者が立ち上がる時にはどんな特徴がある?

若くて健康な時には勢いよく立ち上がれますが、高齢になると筋力が衰えたり、関節に痛みを抱えたり…といったように身体の機能が低下して、簡単な立ち上がり動作も難しくなります。「よっこいしょ」と立ち上がる様子を見たことはあるでしょう。ゆっくりと立ち上がる高齢者には共通の特徴があります。高齢者がどういう動きをすると立ち上がりやすいのかをまず知っておくことで、立ち上がりを介助する場合に役立てることができるでしょう。

では、どういった特徴があるか…。それは、立ち上がる時に「前傾姿勢になること」です。
高齢者の立ち上がりには、身体を前に倒して重心が十分に前に移ってからゆっくり身体を起こす特徴があります。この動きをするのは、座っている時はお尻にある重心を、身体を前に倒すことで足の裏に移動させるためです。そうすることで立つ準備ができます。しかし、背中が丸まった姿勢で、身体を前に倒すことができない方や脚の関節を十分に曲げ伸ばしできない方は、上手く立てずにふらついたり、尻もちをついてしまったりする可能性があります。そのような場合には特に、立ち上がりの介助が必要となってきます。

立ち上がり介助の方法とは?どうやってサポートする?

立ち上がりが安定しない方を介助するにはどうしたら良いのでしょうか。ベッドから立ち上がる際の介助を想定して、具体的な方法を3つご紹介します。

  • ||||肘を支える介助方法
  • ||||抱え込むようにする介助方法
  • ||||横に立つ介助方法

(1)「肘を支える介助方法」の具体的な手順は?

肘を支える介助方法」の具体的な手順は?
  1. 介助者は、ベッドに浅めに座った被介助者の前に立ちます。
  2. 被介助者には、背筋を伸ばした状態で足を手前に引いてもらいます。
  3. 介助者は被介助者の肘を下側から持ち、被介助者にはお辞儀をするように上半身を前に倒してもらいます。
  4. 上半身を前に倒すことでお尻が浮いたら立ち上がってもらいます。
  5. 立ち上がった後は、被介助者の立位が安定していることを確認してから離れましょう。

(2)「抱え込むようにする介助方法」の具体的な手順は?

  1. 介助者は、ベッドに浅めに座った被介助者の前に立ちます。
  2. 介助者は両膝を軽く曲げて、被介助者の片方の膝(片方に障害を持つ場合は障害がある方の膝)に両膝を揃えて当てます。
  3. 被介助者の両腕を介助者の首にまわしてもらいます。
  4. 介助者は、両手を被介助者の肩甲骨の下や腰のあたりに当てておきます。
  5. 介助者は、被介助者と膝を合わせたまま後ろに体重を移動し、被介助者の膝や上半身の伸びを見ながら立ち上がります。
  6. 立ち上がったら介助者は腕の力を緩めますが、この時重心が介助者側に傾いていることが多いため、被介助者の身体を少し後ろに戻してあげると体勢が安定します。

(3)「横に立つ介助方法」の具体的な手順は?

  1. 被介助者には、背筋を伸ばした状態で足を手前に引いてもらいます。
  2. 介助者は被介助者の横に立ち、被介助者の身体のほうを向きます。被介助者の右側に立った場合は、被介助者の右脇を右手で抱え、左手は仙骨部(腰の下側付近)に当てます。
  3. 被介助者にはお辞儀をするように上半身を前に倒してもらい、介助者は被介助者のお尻が浮いたタイミングで、腰を押しながら斜め上に誘導します。
  4. これで立ち上がることができますが、介助者は被介助者が前のめりに転ばないように注意して、バランスを崩した時にはすぐにサポートしましょう。

立ち上がり介助をしやすくするためのポイントは?ベッド周りの環境を整えよう!

立ち上がり介助をしやすくするためにベッド周りの環境を整えましょう。ポイントは大きく3つ、「ベッド周りのスペース」「ベッドの高さ」「ベッドに取り付けるオプション」です。

||||ベッド周りのスペース

立ち上がり介助を行う際には、被介助者が上半身を前に倒したり、介助者が被介助者の前に立ったりします。1人で立ち上がれる場合はベッド周りのスペースはあまり広くなくても問題ありませんが、介助が必要な場合には介助者が補助する時のスペースも考慮しベッドの配置を考える必要があります。物を整理する、レイアウトを変えるなどして、立ち上がり動作が行えるような十分なスペースを確保しましょう。

||||ベッドの高さ

立ち上がりの際にはベッドの高さも重要なポイントです。ベッドの高さが極端に低い場合は、立ち上がりが困難になってしまいます。マットレスを分厚いものに変えたり、ベッド自体を買い替えたりして、ある程度の高さがあるベッドにしましょう。ただし、ベッドが高いと寝る時に怖いと感じる方もいるかもしれません。そんな方には電動ベッドや介護ベッドについている「高さ調節機能」が役立ちます。高さ調節機能とは、電動でベッドの高さを上下できる機能のことです。寝る時には一番低い位置に設定して、立ち上がりの際には足の長さなどに合わせてベッドを高くするという使い方ができます。
ご興味のある方は、パラマウントベッドにも「高さ調節機能」がついたベッドがありますので、こちらのリクライニング付き電動ベッド インタイム 1000をご覧ください。

||||ベッドに取り付けるオプション

ベッドにつかまる場所があると、立ち上がりの負担を少し軽減することができます。そのつかまるものとして役立つのが「手すり」です。「手すり」には、固定式のものと角度調節ができる回転式のものがあります。回転式の場合にはベッドで眠っている時は閉じて使用し、ベッドから立ち上がる時には開いて使用することができます。

パラマウントベッドでは、立ち上がりや移乗に役立つ回転式の介助バーをご用意しております。詳しくはこちらのページをご覧ください。



立ったり座ったりする日常動作にも介助が必要になると、ベッドから動きたくないと感じる方もいるでしょう。たしかに人の手を借りるのがおっくうで、自分で動くのにも労力が必要になるため、面倒に感じるのも無理はありません。しかし、身体は動かさないとますます機能が低下してしまうので、介助をしてもらいながらでも身体を動かしましょう。

そして、できるだけ被介助者自身で行えることは自身の力で行うことが大切です。例えば、ベッドから1人で立ち上がれなくても、起き上がれるのであればベッドに座るところまで被介助者自身の力で行う、立ち上がりで介助を受ける場合でも、介助者に身体を預けるだけでなく可能な限り力を入れて立ち上がるなどです。部分的にでも、できると実感できれば喜びや自信にもつながるはずです。被介助者が安全に行動できる環境を整えたり、被介助者が自分で行いたくなるような声がけをしたりすることは、自立を促す介助のひとつといえるでしょう。

被介助者自身で行えないこともあります。介助が必要になるのはこの時です。介助者はすべてのことに手を出すのではなく、被介助者が自身の力で行えないことを、必要に応じてサポートしてください。立ち上がりを介助する際には、今回ご紹介した方法を参考にしながら、被介助者ができることは自身で行ってもらい、できないことをサポートしていきましょう。