介護ベッド(電動ベッド・特殊寝台)各部の名称は?それぞれどんな特徴があるの?

介護ベッドは様々な部品の組み合わせで作られており、それぞれに役割があってつけられています。購入前に知っておくことで、商品の比較検討にも役立つでしょう。ここでは、介護ベッドの付属品の名称や役割を詳しくご紹介いたします。

介護ベッドの購入を検討していると、「電動ベッド」や「特殊寝台」、「ギャッチベッド」という呼び名をよく見かけます。一見違うもののように思われがちですが、どれも介護ベッドの呼び方の1つです。また、介護ベッドがどのような構造になっているかご存知でしょうか?介護ベッドはさまざまなパーツからできており、それぞれのパーツには役割があります。この記事では、介護ベッドの購入を検討する上で知っておくと役立つ、介護ベッドのパーツの名称やその役割をご紹介いたします。

電動ベッド・特殊寝台・ギャッチベッドは全て介護ベッド?

電動ベッド・特殊寝台・ギャッチベッドは、介護ベッドの呼び方の1つです。電動ベッドは、介護以外の目的で使用されることもありますが、特殊寝台・ギャッチベッドは介護ベッドと同じ意味で使われています。

電動ベッドは、電動で背もたれや脚の部分が動くリクライニング機能を備えたベッドのことです。電動ベッド全てが介護ベッドというわけではなく、介護が必要な人や高齢者に向けたベッドのみ介護ベッドと呼ばれています。最近では、健康で若い世代でも、睡眠の質をあげたり、ベッドの上でリラックスすることを目的として電動ベッドを使う人が増えています。

ギャッチベッドは、ベッド上に寝たままの状態で、上半身を起こしたり、膝を曲げたりする機能を備えたベッドです。医療や介護の分野では、ベッドの背もたれを上げることはギャッチアップと呼ばれています。その語源は、リクライニングベッドを考案したアメリカの外科医「ウィリス・ギャッチ」からきており、日本では介護ベッドのことを「ギャッチベッド」と呼ぶこともあります。

特殊寝台とは、介護ベッドと同じ意味で使われています。ベッドにはモーターが組み込まれており、背もたれ部分が起き上がる機能、足元の傾斜角度が調整できる機能、床板の高さを調整できる機能が備わっています。その中でも、サイドレール(手すり)を取り付けられている(または着脱可能)なベッドが、介護保険法により「特殊寝台(介護ベッド)」と定義されています。

介護ベッドの各部の名称と役割とは?

介護ベッドには多くの機能があり、それぞれに名称と役割があります。各部の名称・役割を知っておくと、ベッドの説明を聞く際にも理解しやすくなりますよね。ここでは、パラマウントベッドが販売する介護ベッド「インタイム1000」を参考に、購入検討に役立つ介護ベッド各部の名称と役割をご紹介いたします。

マットレス

マットレスは、素材も硬さもさまざまであり、利用者の状態や好みに合わせて変えられます。寝返りや起き上がりがしやすいのは硬めのマットレスです。自立度が低い、自力で起き上がれない方の場合は、体圧分散に優れた柔らかめのマットレスが向いています。

ベッドサイドレール

ベッド脇に設置されている手すりで、転落や寝具の落下を防ぐために設置するものです。自力で起きあがれなくなった人が、サイドレールを手掛かりに寝返りや起き上がりに利用するケースもあります。ただし、サイドレールは差し込み穴に差しこまれているだけのもので、体重をかけるとぐらつきます。しっかりとした支えが必要な場合はスイングアーム介助バー(手すり/介助バー)を使います。

ベッドサイドテーブル

食事・読書の際に便利な、ベッド用のテーブルです。サイドレールに乗せて使用するタイプの「オーバーテーブル」のほか、キャスターつきで門型にベッドを囲むタイプの「オーバーベッドテーブル」、L字型の脚をベッドのすき間に差し込むタイプの「ベッドサイドテーブル」もあります。

ボトム

ボトムとは、ベッド本体の中でマットレスを敷く床板の部分です。ボトムは、複数枚に分割されていて、リモコン操作でモーターを動かすと連動して、背もたれや膝の部分を起き上がらせたりベッド全体を傾けたりすることが可能です。上に敷くマットレスの通気性を考えて形状が設計されています。

ヘッドボード・フットボード

ベッドの頭側にあるボードを「ヘッドボード」、足側にあるボードを「フットボード」と呼びます。ボードは、伝え歩きの支えにもなりますし、マットレスや布団のずれや落下防止の役割もあります。

スイングアーム介助バー(手すり/介助バー

ベッド上で寝返りをする際や乗り降りするときの支えに使います。開閉できるようになっており、開けるとベッドに対して垂直になるため、立ち上がりの支えに役立ちます。ベッドに固定できるので、しっかりと身体を支えることができます。

キャスター

介護ベッドにはモーターがついているため非常に重く、大人2人でやっと運べるくらいの重量になるため、ほとんどの介護ベッドにはキャスターの取り付けが可能です。キャスターにはロック機能がついており、その場に固定することもできます。

手元スイッチ

介護ベッドは、手元スイッチのボタンを押すだけで簡単にベッドのリクライニング操作ができます。手元スイッチのボタンデザインはメーカーによって異なります。手元スイッチにはフックがついており、ベッドのサイドレールやボードにかけておけるものがほとんどです。

介護ベッドのモーター数による機能の違いとは?

介護ベッドには主に次の3つの機能があります。これらの機能は、モーターによって調節が可能で、モーター数によって使える機能に違いが出てきます。ここでは、介護ベッドの機能の種類と、モーター数による使える機能の違いをご紹介します。

介護ベッドの機能の種類

背上げ機能

「背上げ」は、背中から腰にかけて起き上がりを補助する機能です。身体を起こすことで、食事がしやすくなります。

膝上げ機能

「膝上げ」は、かかとへの部分圧を軽減したり、むくみの軽減にもつながります。背上げ機能と組み合わせることで、背上げ中に身体がずれてしまうのを防いだり、摩擦や圧迫感を軽減したりします。

高さ調節機能

ベッドの高さを調節する機能です。ベッドから立ち上がるのに楽な高さ、介助が楽な高さに調整できます。また、高さを上げることで介助者の腰痛を予防したり、低くすればベッドから転落時のリスクも下げられます。

モーター数による機能の違い

モーターの数によってベッドの機能が変わるため、目的にあわせて選ぶ必要があります。

1モーター

ベッドの背上げ、背上げ・膝上げ、もしくは高さのどれか1つだけ動かせます。
自力による起き上がりが比較的できる方の補助に使われます。

  • ||||背上げ
  • ||||背上げ・脚上げ連動
  • ||||高さ調節

2モーター

2つのモーターで背上げ・高さの調整、背と膝の調節などができます。背上げ・膝上げを同時に行える「背上げ・膝上げ連動機能」がついたベッドもあるので、自力で起き上がったり立ち上がったりするのが不安な方は、2モーター以上のベッドが良いでしょう。

  • ||||背上げ+高さ調節
  • ||||背上げ・膝上げ連動+高さ調節

3モーター

3モーターは、背上げ・膝上げ・高さを調節する機能がついており、それぞれ個別に動かすことができる介護ベッドです。

  • ||||背上げ+膝上げ+背上げ・膝上げ連動+高さ調節

4モーター

3モーターベッドが持つ背上げ・膝上げ・高さ調整機能に加えて、マットレスを左右に傾ける機能が追加されたベッドです。
中には、寝返り機能をタイマーで起動するベッドもあり、要介護度が高い方の介助をサポートしてくれます。

  • ||||背上げ+膝上げ+背上げ・膝上げ連動+高さ調節+左右の傾き機能

介護ベッド関連の事故について

近年、介護ベッドの誤使用や想定外の使い方によって、介護ベッド関連の重傷・死亡事故が発生しています。特に多いのは、サイドレールやベッド用グリップによる事故です。2007年5月~2019年8月の「医療・介護ベッド安全普及協議会」の調査によると、サイドレール・ベッド用グリップのすき間の事故だけでも66件にのぼります。

その多くは危険があるかどうかの確認と正しい使い方によって未然に防ぐことができますので、利用の際は注意しましょう。

主なサイドレール・ベッド用グリップのすき間の事故例

  • ||||サイドレールなどの中に頭や手足が入り込み、挟まった。…30件
  • ||||サイドレールとサイドレール(ベッド用グリップ)とのすき間に首が入り込み、挟まった。…16件
  • ||||サイドレールなどとボードのすき間に首が入り込み、挟まった。…11件
  • ||||サイドレールなどとマットレスやベッドフレームの間に挟まった。…9件

※参照元:医療・介護ベッド安全普及協議会 「続 医療・介護ベッドここが危ない!!」

危険な設置例

  • ||||ベッド周りが散らかっている
  • ||||サイドレールがぐらぐらする、サイドレールを逆向きに設置している
  • ||||周りに落下の危険性があるものを置いている
  • ||||周囲にコード類があって足を引っかけやすい
  • ||||ベッドに下に物があり、足を引っかけやすい
  • ||||キャスターがベッドからはみ出しており、足をひっかけやすい
  • ||||キャスターが固定されていない

※参照元:介護ベッドまわりの事故と対策 介護ベッドまわりの事故と対策 医療・介護ベッド安全普及協議会

サイドレールに異常はないか、手や頭を挟みそうなすき間はないかなど、介護ベッドの安全を確認したら、寝室の整理も行いましょう。整理整頓は安全につながる第一歩です。

事故に繋げないためのベッド周りの確認事項

  • ||||ベッド周りは整理整頓されているか?
  • ||||サイドレールやサイドボードをしっかり固定しているか?
  • ||||レール周りに6~7cm前後のすき間はないか?(2005年以前の製品は注意)
  • ||||サイドレールはベッドと同一メーカーのものか
  • ||||サイズの合ったマットレスを使っているか?
  • ||||ベッド内部に危険な構造やすき間はないか?
  • ||||キャスターやベッド用グリップはきちんと固定されているか?
  • ||||キャスターの向きは問題ないか、足をひっかけてしまう心配はないか?
  • ||||周囲に引っ掛かりそうなコード類はないか?
  • ||||ベッドと壁の間に身体が挟まりそうな空間はないか?
  • ||||ベッドの下や上に物を置いていないか?
  • ||||周りに落下の危険性があるものはないか?

※参照元:介護ベッドまわりの事故と対策 介護ベッドまわりの事故と対策 医療・介護ベッド安全普及協議会

JIS規格を遵守するかどうか取得は、あくまでもメーカーの自主判断なので、高価なベッドであっても、JIS規格を守っているかはわかりません。
また、たとえJIS規格を順守していたとしても、事故を完全に防ぎきることはできません。介護ベッドを利用する際は、お使いになる方の身体に合っている寝台なのか、ベッド周りに危険なものはないか、利用者・介助者ともに「安全」に対する配慮を怠らないようにしましょう。

パラマウントベッドでは、製品をより安全にご使用いただくために徹底した品質管理体制と、医療・介護用ベッド販売の確かな実績を持って、お客様に安全にご使用いただける製品を提供しています。詳しくはこちらの「お客様に提供する「5つの安心」」をご覧ください。